先週行われた日銀金融政策決定会合は、事前に説得力満点の“観測”報道が伝わっていたため、その結果にほとんど違和感はなかった。
とはいえ、必ずしも“無風”での通過とは言い切れず、会合通過後の日本国債10年物の利回りは一旦0.725%近辺まで大きく低下。週末にかけて日経平均株価は史上最高値を一段と更新する動きを見せ、東証REIT指数も急激に値を戻す展開となった。加えて、ドル/円は再び151.80円台まで上値を試す場面があり、市場はまるで利下げ実施が決定したときのような反応を見せている。むろん、22年10月と23年11月に2度までも上値を押さえた152円手前の水準には、今のところ強い上値抵抗が感じられており、同水準を突破することはた決して容易いことではなさそうである。
まして、市場の一部では日銀が年内にも追加利上げを実施するとの見方が既に燻り始めている。今回、日銀が公表した声明文には「当面、緩和的な金融環境が継続する」との文言が確かに盛り込まれていたが、なかで追加利上げの可能性について明確に否定していたわけでもない。当然のことながら、一段の円安進行となれば日本国内の物価上昇が加速する可能性は高まり、日銀はそうした事態に追加利上げで対応せざるを得なくなる。
さらに、日銀の植田総裁は「バランスシート縮小を視野に入れていくつもり」との考えも会見で示していた。市場は、おそらく「だいぶ先の話」とタカをくくっているのだろうが、いずれ大幅な賃上げが現実のものとなり、景気が良くなっているとの実感を得る人が今よりも増えれば、徐々に“超”が付くほどの金融緩和状態を継続することも難しくなって行くだろう。むしろ、そうなることが理想である
なお、このところのドル/円の上昇については、円安よりもドル高の色合いの方が強いと言える。実際、ユーロ/円や豪ドル/円などのクロス円は週末にかけて全般に大きく値を下げており、その一方でユーロ/ドルの日足も21日、22日と2日連続で、少々長めの陰線を描くこととなった。
やはり、ポイントは一つに米連邦公開市場委員会(FOMC)の参加メンバーらが示した金利予測の分布図(ドット・プロット)にあったと言えよう。既知のとおり、その中央値は4.625%と「年3回」の米利下げを予測するものであったが、よく見れば「年2回」と予測したメンバーも9名(19名中)を数える結果となり、事前の想定よりもタカ派寄りの印象となったことは見逃せない。
それでも、米国株と米国債が強含み(米債利回りは弱含み)で推移しているのは、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が発した「今年のある時点での緩和開始が適切」とのコメントに依拠した「いいところ取り」の感が強いと思われる。
前回更新分の本欄でも述べたように、FRBが利下げに前向きな姿勢を示すと、米株価が強含んで米個人消費が拡大し、かえってインフレ鈍化にブレーキをかける可能性がある。だからこそ、FOMC後の会見でパウエル議長は「インフレは大幅に緩和したが、継続的な進展は保証されていない」と述べることも忘れなかった。
正味のところ、米利下げを「6月開始」と見る向きは一頃よりも減っている模様。少なくとも、目下は欧州中央銀行(ECB)や英中銀(BOE)の早期利下げ期待の方が強まってきている。その意味で、やはり当面はユーロ/ドルやポンド/ドルの行方をいつも以上に注視しておかねばなるまい。
ユーロ/ドルについては、やはり1.08ドル処の節目や一目均衡表の日足「雲」下限を下抜けるかどうかが一つの焦点。結果、クロス円が一段の下値を試す動きとなれば、ドル/円の上値も自ずと限られてくることになろう。
(03/25 07:00)
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