先週5日に発表された6月の米雇用統計の結果を得て、市場は「9月米利下げ開始」の観測を一段と強めた模様である。既知のとおり、6月の非農業部門雇用者数(NFP)の伸びは事前予想を上回ったものの、前回(5月)実績よりは伸びが鈍化し、さらに5月と4月の結果は大幅に下方修正された。加えて、失業率が前回よりも若干上昇していたことも手伝い、多くの市場関係者からは9月利下げの可能性が指摘された。
振り返ると、先週は1日に発表された6月の米ISM製造業景気指数が3カ月連続で50割れの水準に沈み、3日に発表された5月の製造業新規受注や6月の米ISM非製造業景気指数も予想よりかなり弱めの結果であった。
2日に講演した米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は利下げについて「さらなる証拠が必要」などと述べていたが、同時に「予想外の労働市場の軟化は“行動”のきっかけになり得る」とも述べており、その意味からしても6月の米雇用統計の結果はFRBが利下げの判断を行う上で重要な“証拠”の一つになったものと思われる。
今週は、11日に6月の米消費者物価指数(CPI)、12日に6月の米生産者物価指数(PPI)の結果が発表される運びとなっており、目下の市場の観測が“確信”に変わっていくかどうか、大いに注目されるところとなる。
一方、先週末までにユーロ/ドルが7営業日連続の上昇となったこともやはり見逃せない。その間に、一目均衡表(日足)の「転換線」や200日移動平均線、日足「雲」などの重要な節目を次々に上抜ける動きとなったことは。まさに目を見張る。
周知のとおり、6月30日に行われた仏議会選挙の第1回投票の結果は、マリーヌ・ルペン氏が事実上率いる極右政党、国民連合(RN)が予想どおり躍進したが、その時点から市場では「RNは事前の一部世論調査より小幅な差で勝利することになる」との見方が広がり、むしろ週明けからユーロを買い戻す動きが強まった。
さらに、7月7日の第2回投票を控えるなかで、マクロン大統領率いる与党連合と左派連合が候補者を一本化する動きとなり、結果、RNなどの極右勢力は絶対多数に大きく届かないとの見方が早い時点で大勢を占めるようになった。つまるところ、選挙結果がユーロを下ブレさせるリスクは見る見る低下して行った。そして実際、第2回投票の出口調査では、左派連合が第1党となる見通しとなっている。
また、4日には英議会下院選挙の投開票が行われ、最大野党・労働党が14年ぶりに政権を奪取することとなった。とはいえ、結果を見る以前に労働党の圧勝は事前に織り込まれており、むしろポンド/ドルも連日で上値を追う展開を続けた。結果、もはや市場では一頃のような“ドル独歩高”の様相は見られなくなっている。目先、ユーロ/ドルは上げ一服となってもおかしくないのだが、今週発表の米CPIやPPIの結果次第では1.09ドル処を試しに行く可能性もあると見られる。
その割にドル/円は、依然として高止まりの状態を続けているとの感もあるが、そろそろ潮目が変わり始めてもおかしくないように思われる。
実際、先週は日本国債10年物の利回りが一時的にも1.10%台まで上昇する場面が見られ、日本株市場ではメガバンク株を中心に金融株全般が大きく上値を伸ばす動きとなった。その背景にはやはり月末に控えた日銀金融政策決定会合の結果に対する市場の思惑が絡む。今週は9-10日に「債券市場参加者会合」が行われる予定となっており、同会合に相前後して市場に伝わる諸々の関連ニュースがドル/円の値動きに少なからぬ影響を及ぼすと心得ておきたい。
仮にドル/円が160.30円処を明確に下抜けてきた場合は、21日移動平均線(現在は159.20円処)を試す可能性もあると見る。
(07/08 07:00)
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