先週のドル円は2か月半ぶりに150円割れとなり、昨日は148.56円まで下落、前回(12月3日)安値の148.64を下回り、昨年10月11日以来のドル安値(円高)となった。これは何を意味するか。今日が最後のコラムとなるので、少し中長期的にドル円相場を読んでみたい。
まず過去半年間のレンジの半値(149.23円)戻しを越えたことに注目した。この相場展開は2022年4月から始まったドルの上り相場が、2024年7月の161.95円を頭に、2025年1月の158.88円で2番天井を形成し、往って来いの下り相場に入ったと読んだ。このままのドルの売られやすさが継続していけば次のターゲットはフィボナッチ分析で61.8%戻しの146.95円が表れる。もしそれが破れることになれば、次は145円の節目が見えてくる。一直線には行かないまでも、中長期的に見れば上下を繰り返しながら、ドルはだんだん減価していき、これから2026年末まで110円±5円までの円高方向に歩むことになると予想している。究極は2028年4月の100円割れまで見えている。
この裏には、当然為替相場の変動要因たるファンダメンタルや需給関係が存在するが、これまでの筆者の経験では、チャートを使ったテクニカル分析はとても大事だと考えている。為替に携わって、数々の相場予想を行っており、当コラムでも毎週、1週間のレンジ予想を出しているが、比較的に的確な相場となっていると自己評価している。また現在も取引先等との20年を超える勉強会が続いているが、それも筆者の相場分析が役に立っており、それなりの意味のある分析、予想ができている結果と考えている。今後も自分の感性を磨いて精進を続けていきたい。
さて最後に当たり当コラムを振り返ってみたい。
当コラムの第1号のタイトルは「利益を上げるためにもっとも大事なこと」であった。その答えは「知っていることは誰にも言うな」である。これは、今から35年前に米国のディーリングハウスに武者修行に出たときに「ディーリングの厳しさ」を体感した時に学んだ言葉だ。これは今でも通じる。別な言葉で言えば、「相場への入り方、出方を間違えるな」と言うことを示している。
すなわち相場を左右するほどの有力なディーラー、投資家、投機家は、黙って粛々と相場に入る(もちろんその裏付けをもっている。これがポリティカルエコノミーの真髄)。そして目標利幅に達した時に、おもむろに自分の手の内をさらす。そこで、市場に買いが膨らんだ時に、売りに回る。「ニュースが出たときは相場の終盤」とはこのことである。欧米のディーラーは一匹狼、個人事業主、自分の持っている技や情報は決して明らかにしない、奪い取るしかない、と胸に刻んだエピソードである。
「強いドルは米国の国益である」。これは米国財務長官の決まり文句である。現在のベッセント長官も言い方は微妙に違うが、同様に発言している。これからドルが下落していったときに、どの段階でこの発言が出るか注目し続けていきたい。ただし「強い」ままでは言葉の表現だけで米政府はドル安を容認であり、「より強い」と発言した時に、本気にドルサポートを行うはず。その時こそ米国政権の為替相場に変化が出る時と考えている。
筆者の為替との付きあいは、銀行のディーリングルームでの見習いから始まった。それから53年、相変わらず為替の世界にどっぷりつかっている毎日である。「為替は面白い!明日は、いや今夜は、今は、どんな情報が金融市場にかけめぐっているだろうか !」と思い巡らせながら眠りにつく。大体はNY市場の午後に入っている。
今日が最終回。13年にわたる長い間、ご愛読いただき、本当にありがとうございました。少しでもお役に立っていたのであれば、望外の喜びです。感謝の言葉しかありません。
“Once a Dealer, Always a Dealer”
(2025/2/26、 小池正一郎)
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